2007年08月07日

高画質感と高画質の乖離

ITmediaにて、ソニーとキヤノンのビデオカメラの画質比較が行われていました。ソニーのHDR-CX7もキヤノンのHR10も、HDで撮影が可能な機種です。

先の記事の記者によれば、キヤノンのビデオカメラは素性がよいので画質がよいのだそうで。リンク先の記事の画像から、切り抜いたサンプルを以下に掲載しました。

ソニーCX7によるサンプル1 ソニーCX7によるサンプル2

こちらが、ソニーのCX7によるサンプル。 全体に絵がぼけていますし、横方向に絵が流れてしまっています。

キヤノンHR10によるサンプル1 キヤノンHR10によるサンプル2

こちらが、キヤノンのHR10によるサンプル。 こちらのほうが、絵はくっきりしています。

確かに、記者の言っている事は納得…とは言いがたいです。 次に掲載するサンプルをご覧ください。 次の画像は、上または左に表示されている画像がソニーのCX7、下または右に表示されている画像がキヤノンのHR10です。

ソニーCX7によるサンプル3 キヤノンHR10によるサンプル3

キヤノン機の画像は、随分とのっぺりしています。ソニー機では写っている汚れや凹凸が、キヤノン機ではありません。 また、画面中央の下のほうの継ぎ目が、キヤノン機ではきれいさっぱり消え去っています。

ソニーCX7によるサンプル4 キヤノンHR10によるサンプル4

先ほどのサンプルを明るくし、拡大したものです。キヤノン機では、継ぎ目がそこにあったことさえ全く感じ取れません。 過度なノイズリダクションによる弊害でしょうか。

ソニーCX7によるサンプル5 キヤノンHR10によるサンプル5

ソニー機では、山の木々の生え方が確認できます。しかし、キヤノン機では霞に隠れてしまい山に木々が茂っているのか土が露出しているのかさえ判断するのは容易ではありません。 輪郭だけは、キヤノン機もくっきりしているのですが。

ソニーCX7によるサンプル6 キヤノンHR10によるサンプル6

ソニー機では、電線はあまりくっきりしていません。キヤノン機では、電線がギザギザです。 被写体が電線とわかっているのでカメラの問題とわかりますが、これほどギザギザでは被写体が元からギザギザしているのかの区別もつきにくいです。

また、ソニー機では海面の大まかな状態がわかりますが、キヤノン機では奇妙な筋が見えるばかり。

ソニーCX7によるサンプル7 キヤノンHR10によるサンプル7

ソニー機では、葉の根元の部分まで大まかな生え方がわかります。 しかし、キヤノン機では色の濃い部分は潰れてしまっていて、輪郭しか見えません。

ソニーCX7によるサンプル8 キヤノンHR10によるサンプル8

ソニー機は、全体にぼんやりとした映像です。しかし、屋根の模様を理解する事はできます。 しかし、キヤノン機ではモアレが生じており、よくわかりません。

モアレは、解像度の高い機械では発生しやすい現象です。たしかに、今までのサンプルを見る限りキヤノン機の輪郭はくっきりしていたの、解像度は高そうです。 しかし、屋根の横の部分を見ると、ソニー機では横方向にうっすらとラインが入っている事が確認できますが、キヤノン機では右側では確認できるものの、真ん中から左にかけては消えてしまっています。

ソニーCX7によるサンプル1 キヤノンHR10によるサンプル1

これは、一番初めに見た画像です。たしかに、キヤノン機のほうが木々はくっきりして見えます。 しかし、先ほど確認した屋根の横の部分を見ると、ソニー機では先ほど同様にうっすらと筋が入っている事が確認できます。 キヤノン機では、筋がぎざぎざしたり消えてしまっています。

この画像を見る限り、キヤノン機はぱっと見くっきりしているものの、情報量は少なそうです。 とりわけ、暗部やコントラストの低い箇所の情報量が大幅に減少しています。おそらく、ノイズリダクションを強くかけたことにより、情報が減少したのでしょう。 そして、それによって映像がぼやけてしまう事を防ぐために、画像処理回路のDIGICが輪郭を強調した事により、輪郭が乱れたものと思われます。

キヤノン機では1920*1080でCMOSから画像を読み出している事が度々取り上げられているようです。 1920CMOSハイビジョンだかなんだかというキャッチフレーズだったような気が。 1920*1080で読み出したところで記録するときには1440*1080に縮小せねばなりません。 このとき、適切な処理をしなければ、モアレがジャギー(ギザギザ感)などのノイズが発生します。

最後の質疑応答では、「キヤノンのカメラは、記憶色を重視し、ノイズを消しているためか? 塗り絵っぽいという意見がある」という記者からの発言に対し、 栄木氏は「ノイズを(後から)消しているのではなく、ノイズを出さないように作っている。それは誤解だ」とコメント

うーん、ビデオカメラ用のDIGICとスチルカメラ用のDIGICは違うのかもしれませんが、傾向は同じに見えるのですけどねぇ。 どちらもノッペリしてますから。そういえば、プリンタもその場しのぎ感が溢れる傾向でしたね。

一方でキヤノンの設計は、それらとまったくの逆を行っている。撮像素子であるCMOSのほうを1920×1080のFull Hi-Vison化し、記録系は1440×1080とした。撮像のときに妥協してもいいことはないというポリシーが、いかにもカメラメーカーである。

不完全なスペックシートばかり眺めていると、この様に判断してしまうのでしょうかねぇ。

脱線してしまったしまったので、この辺で結論を。

画質を判断する際に、画質を確認しようと意識しすぎると、木を見て森を見ずな状態になるのかもしれません。 このケースでは、素直に見ればどちらの画像の情報量が多く、自然であるのか、区別できたはずです。 そして、きれいに見える画像を作る事はできても、自然な画像を作る事は難しいのです。

AV機器を購入する際に迷ってしまったら、自然に感じる商品を選ぶ事が、よい商品を選ぶ事への最短ルートとなるのではないでしょうか。

ビットレートの違いによりこの検証はフェアでないとのご指摘がありましたので、追加の検証を行いました。そちらも、よろしくお願いします。

この記事へのコメント
>この画像を見る限り、キヤノン機はぱっと見くっきりしているものの、情報量は少なそうです。

本当に少ないんです。HDR-CX7はXP(15Mbps)、HR10はXP+(12Mbps)であることは触れておかないとフェアじゃないですね。
HG10は15Mbpsがあるそうなので、そっちで本当の決着がつくのではないでしょうか。
Posted by at 2007年08月10日 18:33
ご指摘のとおり、フェアではないと判断されても致し方のない記事でした。鋭いご指摘、ありがとうございます。

以下に同一ビットレートによる検証を追加致しましたので、ご高覧を賜れれば幸いです。
http://devious.seesaa.net/article/50967505.html
Posted by El Dorado(筆者) at 2007年08月10日 23:29
動画がどう見えるのかについては、静止画とずいぶん異なっていて「高い周波数のコントラスト」つまり解像力はあまり重要ではなく「低い周波数のコントラスト」のほうが重要だといわれているようです。
ですから、動画をキャプチャーして拡大した虫眼鏡で見たような画像がどこまで分解しているかのような比較はあまり意味がありません。

今回の画像比較では、メーカー思想の違いが良く現れていて、ソニーは低い周波数のコントラスト重視の画像、キャノンは、高い周波数のコントラスト重視の画像になっているように見受けられます。
これは、キャノンのレンズとソニーのレンズの設計思想の違いでもあります。CCDだけではありません。
彩度の扱いもだいぶ違って、ソニーは緑を記憶色に強引にシフトさせ、キャノンは比較的ニュートラルです。実はデジカメでも同じ傾向があるようです。

ガンマカーブもソニーとキャノンはずいぶん違います。ソニーはカーブが立っているし、キャノンは寝ていて裾野と頂上がなめらかです。
それに加えて、アンシャープマスク処理もこの二つのメーカーは思想が違います。ソニーは割と強めにかけます。キャノンはソニーよりは弱いメーカーで、くっきり感はあまりありません。アンシャープマスクを強くすると、肌合いのザラザラ感が強調されるので、指摘の画像のような違いとなって現れます。
画像の情報は、「階調」の情報量のほうが重要でアンシャープマスクを強くすると階調の情報は失われてしまいます。階調の保持に関してはかなりのノウハウが必要で解像力のような単純なものでは推し量れません。逆に良い階調の保持のためには、解像力はどうでも良いくらいの話です。(結果的に良くなる場合が多いですが)

いずれにしても、この二種類の動画はある程度の距離をとって「動いている状態」で比較しないと本当の比較はできないですし、虫眼鏡で見たような微視的な部分の解像力のみで画像を判断するのは、画像のなんたるかを全く理解していないのではないか?と思います。

ただし、キャノンの画像がのっぺりしているというのは、多くの人が指摘する事なので、そのとおりかもしれません。
Posted by S&L at 2007年08月18日 06:15
>動画がどう見えるのかについては、静止画とずいぶん異なっていて「高い周波数のコントラスト」つまり解像力はあまり重要ではなく「低い周波数のコントラスト」のほうが重要だといわれているようです。
>ですから、動画をキャプチャーして拡大した虫眼鏡で見たような画像がどこまで分解しているかのような比較はあまり意味がありません。

オリジナルの記事では静止画にて比較が行われていましたが、その記事に対する意見でしたので、静止画による比較となりました。
また、動画といえども、絶え間なく動き続けているわけではありませんので、静止画による比較が意味を成さないとは考えていません。


>ガンマカーブもソニーとキャノンはずいぶん違います。ソニーはカーブが立っているし、キャノンは寝ていて裾野と頂上がなめらかです。
>それに加えて、アンシャープマスク処理もこの二つのメーカーは思想が違います。ソニーは割と強めにかけます。キャノンはソニーよりは弱いメーカーで、くっきり感はあまりありません。アンシャープマスクを強くすると、肌合いのザラザラ感が強調されるので、指摘の画像のような違いとなって現れます。

アンシャープマスクを強くかけているメーカーの画像は、全体的にボケているものの細部の情報が損失したりジャギーが発生したりする事はなく、アンシャープマスクを弱くかけているメーカーはその逆となるのでしょうか。


>画像の情報は、「階調」の情報量のほうが重要でアンシャープマスクを強くすると階調の情報は失われてしまいます。階調の保持に関してはかなりのノウハウが必要で解像力のような単純なものでは推し量れません。逆に良い階調の保持のためには、解像力はどうでも良いくらいの話です。(結果的に良くなる場合が多いですが)

階調が保たれていれば、海のうねりや森の木々などの微妙な情報も保たれるでしょう。


>いずれにしても、この二種類の動画はある程度の距離をとって「動いている状態」で比較しないと本当の比較はできないですし、虫眼鏡で見たような微視的な部分の解像力のみで画像を判断するのは、画像のなんたるかを全く理解していないのではないか?と思います。
>
>ただし、キャノンの画像がのっぺりしているというのは、多くの人が指摘する事なので、そのとおりかもしれません。

階調が保たれていれば、画像はのっぺりしないのではないでしょうか。また、階調が保たれているのなら、暗部が潰れてしまう事も避けられるのではないでしょうか。
Posted by El Dorado(筆者) at 2007年08月18日 12:09
アンシャープマスクは、数式で現すと[適用画像=原画+(原画−ぼけ画像)×適用量]で表現される加工画像で、元の情報が増える訳ではありません。指摘の木々のトーンや水の波面の場合だと、その境界部分のガンマだけが立つように作用します。むしろリニアリティは改ざんされトーンも圧縮されて階調再現の幅は小さくなります。人間の目の錯覚を利用した巧妙な情報の切り捨て方とも言えます。
そのノウハウの蓄積の最もある会社がもちろんコダックや富士です。キャノンにはテレビカメラ用レンズやコピー機の製造でそれらに劣らないくらいのノウハウがありますが、どちらかといえば、フィルム的な思想に近く、テレビカメラ的な思想のソニーとは画像造りが少し異なっています。
Posted by S&L at 2007年08月18日 19:50
先のコメントのアンシャープマスクに関する箇所は、反語です。ですので、殆ど返答する箇所はありませんが、

>キャノンにはテレビカメラ用レンズやコピー機の製造でそれらに劣らないくらいのノウハウがありますが、どちらかといえば、フィルム的な思想に近く、テレビカメラ的な思想のソニーとは画像造りが少し異なっています

フィルム的な思想であれば、輪郭強調を好としないのではないでしょうか。
Posted by El Dorado at 2007年08月18日 22:39
>フィルム的な思想であれば、輪郭強調を好としないのではないでしょうか。

みなさん勘違いなさっているんですが、フィルムにはけっこう強い輪郭強調がされています。
ひとつは、現像という化学変化そのものにアンシャープマスク作用をする薬剤が加えられています。
フィルムの歴史は、アンシャープマスクの歴史といっていいくらいです。
もうひとつは、レンズの結像そのものにアンシャープマスク的な隈取がされるようにチューニングされいます。最小散乱円まで像を大きく設定しています。特にコンピューターでスポットダイヤグラムが表示されるようになった近年のレンズはみなそのようで、例外なくコンピューターのなかった時代のレンズのほうが、フォーカス像は小さくシャープです。
近年のキャノンの画像に立体感がないのは、レンズの味付けそのものがそのようになっているためです。設定はツァイスから始まっていてMTFが導入された時期からの傾向です。それまでの日本のレンズは、ひたすら解像力重視の設計思想で、今から見ると過剰なくらい細かいところまで再現するようにできていて線は細いです。

いずれにしても、テレビ画像は銀塩とは全く異なった思想で画像がつくられていて、解像線はかなり太く低周波のコントラスト重視です。フォーカス像は大きく独特の結像をして立体表現はそれほどでもありません。ハイビジョンになって表現できる情報量が増えたので、メーカーの違いが以前よりは表現しやすくなって、今回のソニーとキャノンの違いのような差が出たと考えればよいでしょう。
Posted by S&L at 2007年08月19日 01:47
つまるところ、何を仰りたいのでしょうか。
Posted by El Dorado at 2007年08月19日 23:09
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